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日本人の死因でがんに次いで多い心疾患
生活習慣を見直して「虚血性心疾患」を予防しよう!

高橋 通
高橋 通

東京国際クリニック 院長
医学博士・循環器内科

この記事の監修者

高橋 通
東京国際クリニック 院長/循環器内科
日本循環器学会循環器専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本人間ドック学会認定医、日本抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医。1994年筑波大学医学専門学群卒業。2008年、東京大学大学院医学系研究科医学博士課程修了。1994年から長年にわたり、国立国際医療研究センターや東京大学医学部附属病院の救急医療現場での循環器専門医としての臨床経験を経て、2015年より東京国際クリニック院長。

昨年、著名な俳優さんが「虚血性心疾患」でお亡くなりになったことで、以前にも増してこの疾患に対する注目度が上がっています。厚生労働省が公表した2023年の人口動態統計(概数)において死因第2位の心疾患は、増加する生活習慣病を背景にしたまさに現代病の代表といえるものです。東京国際クリニックの高橋通院長に、どのような方がこの疾患に罹りやすいのか、また、回避する方法についても伺いました。

虚血性心疾患とは

心臓の筋肉にも酸素や栄養素が必要で、それらを運んでいるのが冠動脈(冠状動脈)です。「虚血性心疾患」は冠動脈が狭くなったり詰まったりすることで、心臓の筋肉に十分な酸素や栄養素が行き渡らなくなる病気の総称です。虚血性心疾患は「狭心症」と「心筋梗塞」の2つに大別され、それぞれ冠動脈の状況、症状、治療の必要性などが異なっています。

冠動脈のはたらき

冠動脈は心臓の表面を王冠のように覆って走っており、心臓の筋肉にどの臓器よりも優先して新鮮な血液を供給している重要な血管です。冠動脈には左冠動脈と右冠動脈があり、さらに左冠動脈は左前下行枝と左回旋枝に分かれます。

日本人の死因でがんに次いで多い心疾患
生活習慣を見直して「虚血性心疾患」を予防しよう!

冠動脈の狭窄、閉塞と心筋壊死

狭心症の方の血管断面を見ると、悪玉コレステロールを多く含んだ動脈硬化が冠動脈の内側を狭めて、血液の流れが阻害されていることがわかります。また冠動脈の痙攣が原因で起こる狭窄もあります。「異型狭心症」と呼ばれる疾患です。また、粥状プラークという不安定な動脈硬化巣が突然破裂して「血栓」が形成され、これが冠動脈を塞いでしまった状態が急性心筋梗塞です。先ほどの異型狭心症による血管の痙攣も重症な場合には血管閉塞を起こし、心筋梗塞につながることがあります。

冠動脈の閉塞により心筋への血液供給が不足すると「心筋虚血」という状態になります。さらにこの心筋虚血が進行すると心筋は壊死状態となり、壊死部分は拡大して心臓のポンプ機能は低下し、やがて心不全となり死に至る恐れがあります。

虚血性心疾患の症状

狭心症の症状

狭心症の主な症状は、胸の痛みや圧迫感です。前胸部やみぞおち、心臓の前や奥などに感じられます。また、左肩や下あご、背中、上腹部、左上腕などに痛みが出ることもあります(放散痛)。また、呼吸苦、冷や汗や脂汗、吐き気や胃痛なども出ることがあります。こうした症状は、心臓に負担がかかるような行動をとった時に現れることが多く、坂道や階段の上り、重い荷物を持った時、運動中や心理的にストレスを感じた時、急に寒いところに移動した場合などに出現します。

狭心症の症状の強さや頻度が増加したり、持続時間が延長してきた場合には心筋梗塞の直前の段階を疑う必要がありますので、すぐに医療機関を受診してください。

心筋梗塞の症状

一方、心筋梗塞の代表的な症状は、突然の胸の痛みや圧迫感、絞扼感(こうやくかん)です。胸の中央部から胸全体にかけて、締めつけられるような激しい痛みを感じます。この症状は、狭心症では通常数分から長くても15分程度ですが、心筋梗塞の場合は30分以上続き、安静にしていても治まりません。その他、冷や汗や脂汗、吐き気や呼吸困難感、顔面蒼白、失神、さらにはショック症状を呈することもあります。

心筋梗塞の方への緊急対応としては、すぐに救急車を呼ぶことです。吐き気があるときは、無理に吐かせないようにしましょう。意識がない時にはAED(自動体外式除細動器)を使用することが重要になります。ゴルフ場でAEDを用いて蘇生に成功したケースがあります。

虚血性心疾患の治療

ニトログリセリンによる狭心症症状の改善

狭心症の発作治療にはニトログリセリンを使用した薬剤治療が有名です。この薬剤は冠動脈を拡張し、血流を一時的に改善して発作を抑える効果があります。剤型としては舌の下に含んで溶かす舌下錠や、スプレータイプ、持続性のある貼付薬などがあり、異型狭心症や胸痛コントロールが困難な症例に用いられています。ただし必ず医師の指示通りに使用することが大切です。

ステント治療(PCI)

冠動脈の狭窄部位を押し拡げるために、カテーテルでステントと呼ばれる金属の網のような筒を留置する治療で、狭心症や心筋梗塞の治療法としてはスタンダードな治療法です。アプローチ法としては、手首や足の付け根の動脈からカテーテルを挿入します。カテーテルの先端のバルーンに巻かれた、折りたたまれたステントを冠動脈の狭窄部位に進め、バルーンを膨らませてステントを血管壁に押し付けて留置します。バルーンは抜去し、ステントだけが血管内に残ります。

この治療は局所麻酔で行われ、治療時間は1~2時間、入院期間は2~3日程度です。身体への負担が少なく、持病があったり、開胸手術に耐える体力のない高齢者でも受けることができます。このステント治療は心筋梗塞の治療にも使われます。

冠動脈バイパス手術(CABG)

この手術は開胸手術で、冠動脈の狭窄や閉塞している部位よりも末梢に、患者様ご自身の身体から採取した血管(グラフト)をつなぐことで心筋への血流を改善させるものです。心臓手術の中でもっとも多く行われている手術で、病状に合わせて患者様への負担が少ない方法で術式が選択され全身麻酔で行われます。

虚血性心疾患になりやすい人とは?

この疾患に罹りやすい人には次のようなリスクファクターがあります。下記の要因を持っている人は動脈硬化を起こしやすく、やがて虚血性心疾患に罹患するリスクが高いのです。

ストレス/家族歴/高血圧症/肥満/喫煙/糖尿病/男性/痛風/運動不足/高コレステロール血症/食生活の乱れ

虚血性心疾患で注意が必要なポイント!

虚血性心疾患では次のような症状や状態に注意が必要です。

  • 胸痛が30分以上続く
  • 胸の圧迫感や締めつけ感が15分以上続く
  • 胸の圧迫感や締めつけ感が胸以外の場所に広がる
  • 夜中に息苦しさを感じて目覚める
  • 動悸、脈が不規則に打つ
  • 家族に心臓病にかかっている人がいる
  • 冷や汗や吐き気を感じる

緊急受診の目安

  • 医師から処方されている(ニトログリセリンなどの)舌下錠を3回舌下投与しても症状があるとき
  • 発作が頻回に起こるようになってきたとき
  • 夜中に苦しくなって目が覚めるようになったとき
  • 医師から処方されている(ニトログリセリンなどの)舌下錠を使うと症状が良くなるが、すぐに症状が出てくるとき
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