
東京国際クリニック副院長 宮崎郁子医師による特別インタビュー。今回は自己脂肪由来間葉系幹細胞による治療において細胞培養工程を担当されているONODERAメディカルさんにお伺いして、主席責任者であり、再生医療の研究と臨床に従事されている金田宗久先生にお話を伺いました。
幹細胞治療の特徴
宮崎:私ども東京国際クリニックでは、2024年より自己脂肪由来の間葉系幹細胞を使用した治療を実施しています。「21世紀は再生医療の時代」と言われ、幹細胞は様々な疾患の治療に役立つ可能性を秘めています。
金田:再生医療とは、自己修復能力を応用した医療です。例えば怪我や病気でダメージを受けた組織や失われた組織・臓器を修復し、機能を回復させることを目指した医療です。
宮崎:「人生100年時代」と言われていますが、私たちの幹細胞は出生時から少しずつ数が減少していくのでしょうか?
金田:幹細胞の数は、新生児と比べ50歳~80歳になるとわずか数パーセントにまで漸減し、そのピークは10代から20代と言われています。このピークを境に徐々に減っていきます。80歳までに元々あった幹細胞の数が約1/200まで減るというデータもあるほど極端に減少していきます。
宮崎:もしそこで幹細胞を補った場合、数は増加するのでしょうか。
金田:幹細胞治療は、少なくなった幹細胞を補う治療であることが根本的な考え方で、幹細胞から分泌されるエクソソームやサイトカインなどの因子も関与していると考えられています。

宮崎:では、若いときに採取した幹細胞を保存しておいて、疾患などを治療するタイミングで戻す方がいいのか、ある程度年齢が経っていてもその時の自分の幹細胞を採取し培養させて戻す方がいいのかはどのようにお考えでしょうか。
金田:再生医療では、「自己細胞(自分の幹細胞)を使った治療であること」が非常に重要です。「自己修復」という観点から言うと、幹細胞治療は自分で自分を直すために少なくなった幹細胞を補うものですから、自分の幹細胞を戻した時に「どこにダメージある」、「どこに炎症がある」については自分自身の細胞が一番よく認識しています。80歳の方の幹細胞は確かに少なくなっています。ただ、80年間生き続けてきた細胞なので、数が少ないだけで非常に高い能力を有しています。なおかつ一番優れているのは、80年間その方に起こった出来事すべての遺伝情報を持っている細胞だという点です。
宮崎:細胞が記憶しているのですね?
金田:はい。もし若い人の細胞を投与したとしても、どこに炎症あるかなどの遺伝情報を持っていないので、細胞が体の中でグルグルと路頭に迷ってしまいます。ですから、自分の細胞を使うということが非常に大事なのです。この自身のダメージのある部分に細胞が集まっていく作用をホーミング(家に帰る)と言います。
宮崎:なるほど。ある程度年齢を経ていても、自己細胞を使うことにとても意義があるのですね。
間葉系幹細胞の3つの特徴

なぜ脂肪由来の幹細胞を使うのか?
宮崎:では、なぜ細胞培養には脂肪由来が適しているのでしょうか?臍帯血や臍帯、羊膜からも採取できると聞いたことがあります。
金田:日本の再生医療等安全確保法では、再生医療を安全に受けられるように、国内での治療では自分の細胞しか使えません。つまり他人の細胞を体内に入れることができないので、「自分の細胞を自分に入れる」という大前提があります。幹細胞移植・幹細胞治療は、まず大元の幹細胞を採取し培養して体に戻すという治療です。幹細胞の培養には、臍帯(へその緒)や歯髄・歯の神経も使うことができます。
一般的に知られているのは、へその緒を採取しておき将来の病気の時に使う「さい帯血バンク」という厚生労働大臣の許可を得ている民間事業です。それも再生医療に役立てることができますが、あくまでも取っておいた本人にしか使えません。ただ現実的には出生時の幹細胞で補うことは、細胞に出生時の情報しかないわけですから再生医療が可能かどうかという問題が未だ解明されていません。ただ、臍帯にも様々な能力があり、幹細胞の原料としては非常に優れています。歯の神経や歯髄も同様ですが、抜歯する必要がありますし、永久歯は2度と生えてきませんので原料にするのは困難です。
成人が自分の幹細胞を使った治療をする場合、医療的見地では骨髄が原料の候補となります。骨髄採取は、白血病の治療などで骨髄移植を行うため以前からなされていますが、場合により全身麻酔や入院も必要になるので、患者さんへの負担が大きくなると思います。
一方、脂肪は体のどこにでもありますので、採取にそれほど大きな負担はありません。体脂肪率3%のアスリートから採取することも可能です。もう一つの利点は、脂肪中の幹細胞の割合が骨髄と比べて圧倒的に多いことです。加えて、様々な組織に分化する能力は骨髄と遜色ないくらい高いことがわかっています。しかも年齢の変化を受けないということから、幹細胞の細胞培養の原料として脂肪を使うことが最適であると考えています。
宮崎:脂肪を採取する部位ですが、現在私たちのクリニックではおへそから採取しています。脂肪は体の様々なところにありますが、お尻や他の場所から取らない方がいいのでしょうか?
金田:私も10年以上この治療に携わっているので、お尻や耳の後ろから脂肪を採取したこともあります。ただ実際に細胞を培養してみると、おへその中や周囲から採取した幹細胞が一番安定的に増殖するようです。
これは明確なエビデンスがあるわけではありませんが、おへそはへその緒が通っていたのでオリジン(細胞の起源)に近い部位と言えます。一方、お尻の中の脂肪は脂肪組織が多く幹細胞は少ないので、多めに採取しなければなりません。様々な部位からの脂肪を試した結果、おへそから採取する脂肪の幹細胞がこの治療に一番マッチしたということで、現在はおへその近くから脂肪を採取させていただいています。
宮崎:脂肪を採取する場所によって、幹細胞の質の違いがあるのですね。

幹細胞治療における副作用
宮崎:幹細胞を自分の体に戻す点滴をする際に副作用はありますか?
金田:細胞の特性から言うと、幹細胞は「接着細胞」と呼ばれ培養容器の表面に付着しながら増殖する性質があります。付着すると細胞に固まり(細胞塊)ができ、それを点滴で血液に入れると、最初に肺へ行くので肺で詰まるエコノミークラス症候群、肺塞栓が一番懸念されています。現在、重篤な報告はありませんが、医療機関としては点滴の際にフィルターを掛けることで細胞塊が作られるのを防ぐことができます。
我々のように細胞を培養する施設では、治療を行う医療機関に幹細胞を届ける前に、工程の最後の最後までフィルターを掛けて細胞塊を作らないよう、細胞が接着しない状態でお届けしています。
さらに、我々は凍結細胞を使用せず、生きた細胞をお渡ししていますので、事故が起こらないように最大限の注意を払って細胞を出荷しており、非常に安全に細胞がお届けできていると思っています。
宮崎:私たちのクリニックは丸の内にあり、こちらの大手町のラボと大変近いので、近距離ということも運搬のメリットになりますね。
金田:細胞は時間とともに活性が落ちていきますので、移動する距離・時間が短いことは非常にありがたいです。「この時間帯に投与したい」というご要望を伺い、それに合わせて細胞を作っていますから、作り置きせずジャストタイミングで一番いい状態の細胞をお届けすることができます。
宮崎:先程ラボも見学させていただきましたが、スタッフの方が丁寧に作ってくださっているのを拝見すると本当にありがたく感じます。
幹細胞治療で期待できる効果とは?
宮崎:幹細胞治療の効果としてはどのようなものが期待できますか?
金田:幹細胞は先述したように、体の中でダメージのあるところを修復する、いわゆる「自己修復の細胞」です。ダメージや炎症の病態がある疾患の治療は期待できます。具体的には変形性関節症を含めた怪我などが挙げられます。
また、我々が特に重点を置いているのが動脈硬化の治療です。動脈硬化は慢性炎症、つまり血管の炎症が病態です。私自身は血管外科医として現在も大学で手術を行っています。専門はバイパス手術ですが、これは血管の通り道を作っているだけで、原因である動脈の炎症自体は治していません。せっかく通り道を作ってもまた動脈硬化があると再び詰まってしまうことが長い間臨床上の課題でした。慢性炎症に対する一番効果的な治療は何かと考えた時に、この幹細胞治療が出てきたのです。
この治療を応用するとダメージを受けた皮膚にも期待でき、アトピー性皮膚炎や免疫系疾患でも幹細胞は様々な免疫機能を改善させる能力があるので、更年期障害にも非常に効果があると言われています。
宮崎:最近では、女性だけではなく男性の更年期障害もよく耳にします。
金田:男性更年期の一番大きな病態、すなわち動脈硬化は、腎臓や男性機能の低下もこれがベースにあります。幹細胞治療を受けた方のパフォーマンスが上がったということは、更年期障害や男性機能の低下が改善されているということで、治療後「本当にやって良かった」と言われる方は本当に多いですね。
宮崎:私たちの会員様からも「疲れにくくなった」ですとか、「若返ったような感じがする」というお声をいただいています。
金田:血管を含めた炎症を抑えることにより、臓器の機能が回復してきます。そうすると当然、体感として「元気になった」、「パフォーマンスが上がった」、ゴルフをされる方は「飛距離が伸びた」と言われます。
さらに、自分の体に戻した幹細胞は皮膚にも到達します。皮膚は人間の中で一番大きな臓器で、特に顔は紫外線などで一番ダメージを受けやすい場所です。この治療をすると顔の肌質が良くなり、結果としてパフォーマンスが上がり肌ツヤが良くなって、色々な人から「若返ったね」と言われることが多くなると思います。
宮崎:その他にはアルツハイマー病などにも効果があると聞きます。
金田:我々が関係する医療機関では、認知症の診療に特化して幹細胞治療を行っているクリニックもあります。神経変性疾患や認知症も、幹細胞治療による神経再生や組織を保護することが効果として現れると言われています。
宮崎:それは明るい未来が期待できますね。

再生医療のこれからの展望
宮崎:再生医療の今後の展望についてはどのようにお考えですか?
金田:京都大学の山中伸弥先生が2006年にiPS細胞の作製に成功され、日本の再生医療は世界をリードしています。そして今、iPS細胞と私たちが施行している幹細胞やES細胞が、再生医療という大きな枠組みの中、オールジャパンで取り組んでいるところです。宮崎先生のクリニックでは「予防医療」にも取り組んでおられますが、未病のうちに病気の芽をいかに早く発見して治療に繋げるか、これは非常に重要なことです。幹細胞治療は、予防医療のひとつ前の「先制医療」と言えます。
幹細胞治療を施行することで将来の病気を予防することができたり、パフォーマンスを上げることで何歳になっても健康で元気でいられるというのが先制医療の目指すところです。宮崎先生のクリニックではこの両方をされていますから、本当に素晴らしい取り組みだと思っています。
宮崎:「iPS細胞バンキング」についてはいかがお考えでしょうか?
金田:これも非常に有効で、将来の医療においては大事なポイントになるかもしれません。iPS細胞バンキングをしておくと、将来病気になった時も安心ということです。この10年で再生医療を取り巻く環境は、研究も臨床も大きく発展してきています。10年後は、もう誰も予想がつかないような未来が待っていると思います。
幹細胞治療のメリットは、「将来大きな病気にならない」ということが大きなポイントです。仮に病気になっても、iPS細胞で何らかの治療を必ず受けられるという保証はありません。病気になったその時に、すぐに適切な治療が受けられる状態にあることはとても重要です。ですから、iPS細胞バンキングという医療を利用したり、幹細胞治療で自己修復をしパフォーマンスを上げていくことは、まさに「自分への投資」であると思います。
宮崎:人生100年時代と言いますが、120年時代ということもあり得るかもしれませんね。
金田:人生100年と言っても元気でいることが一番大切ですから、この幹細胞治療は元気でいるための大きな役割を担ってくれるのではないかと思っています。
会員様へのメッセージ
金田:SBIメディックの会員の皆様のような経営者の健康リスクは、組織全体のリスクにもなります。トップの皆様が健康でいることが、社員やそのご家族の幸福にも繋がると思いますので、いつまでもお元気でいていただきたいですね。
宮崎:私もそのように思っています。そして、SBIメディックのサービスを通じて、健康長寿と資産長者という目標を達成していただきたいです。今日は大変勉強になりました。本当にありがとうございました。
東京国際クリニックが提供する幹細胞治療
体性幹細胞の中でも特定の組織に分化可能な「間葉系幹細胞」を用いた幹細胞治療を提供します。間葉系幹細胞は、骨や血管、心筋細胞などに分化する能力があり、身体の骨髄、脂肪、臍帯、歯髄などに存在します。当院では、組織の採取が容易で患者様のご負担(侵襲)の少ない、脂肪由来の幹細胞を治療に用います。
※幹細胞治療に関する注意事項
お体の状態によっては、この治療を実施できない場合がございます。治療をご希望の方は、先ず医師・看護師にご相談ください。




