
この記事の監修者
宮崎 郁子
東京国際クリニック/ 医科 副院長
消化器内科 医学博士
2015年4月から東京国際クリニック消化器内科勤務。
2016年8月より医科 副院長。
東京国際クリニック/副院長、宮崎郁子先生による「郁子先生の部屋」。今回も消化器内科専門医である宮崎郁子先生に、「胃酸の逆流による疾患」についてお話いただきました。
1. 「胃食道逆流症(GERD)」と「逆流性食道炎」
皆さんは日頃、胸やけやげっぷで悩まれてはいませんか?食後に胸のあたりがどうも焼けてしかたがないとか、少し多めに食事をするとげっぷがよく出る。こうした症状は、クオリティ・オブ・ライフ(生活の質)の観点からもあまり良いものとは言えません。
その原因は、胃炎や胃潰瘍、そして今回お話しする「逆流性食道炎」や「胃食道逆流(GERD=ガードと読みます)」かもしれません。後述しますが逆流性食道炎はGERDの一種です。
2. GERD・逆流性食道炎の症状
胸やけやげっぷ以外にも様々な症状があります。私たち医師から見ても「えっ?こんな症状もGERDだったの?」というほど症状は多彩です。
GERDの症状は「食道症状」として、呑酸(すっぱい液が口までこみ上げてくる)、胸やけ、非心臓性胸痛、食道炎などです。また「食道外症状」としては、むし歯や中耳炎、咽頭炎、慢性の咳、声のかすれなども起こります。のどが痛いと耳鼻咽喉科に行き検査をしても原因がわからず、消化器内科で診てもらったらGERDだったということもあります。また、歯の裏側のむし歯も、実はGERDによる呑酸が原因の可能性もあります。

3. GERD・逆流性食道炎の原因
主な原因は、生活習慣の欧米化です。そして胃内のヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)の減少が挙げられます。ピロリ菌は胃の中にいるときはアルカリ性の物質を放出するので、強酸性である胃酸は中和されますが、胃がんの元となるピロリ菌の除去により胃の酸性度は高くなります。
また、胃の噴門部(食道との接合部)の筋肉は「下部食道括約筋」と呼ばれ、食物と同時に胃の中に入ってくる空気を出すために一過性に緩められるので、そこで胃酸も同時に食道側に逆流することがあります。食後すぐに前傾姿勢を続けたり、重いものを持ち上げたりしてこの括約筋が弱まったり、高齢化による括約筋の衰えで胃酸が食道内に逆流することがあります。
また、狭心症の薬やカルシウム拮抗薬という種類の高血圧治療薬も、この括約筋を緩める作用があるので胃酸の食道への逆流が起こり得ます。
4. GERD・逆流性食道炎の診断
診断は、問診、内視鏡による診断、PPIテストなどによって行われます。問診では胸やけと呑酸があれば「GERD」と診断されます。さらに内視鏡による観察では、胸やけをする方の食道にただれている(びらんといいます)箇所が見られる場合には「逆流性食道炎」と診断します。

ただ、全ての方にびらんが見られるわけではなく、「非びらん性胃食道逆流症(NERD=ナード)」という方もいます。また、PPIテストというのは、酸分泌抑制薬のPPIという薬を短期間、試験的に飲んでいただき、症状が改善したらGERDであると診断をつける方法です。
5. GERD・逆流性食道炎の治療
GERDや逆流性食道炎には効果のある薬が開発されています。制酸薬は胃酸を中和させる薬ですが効果があまり持続しません。胃酸の出方を抑える薬には、先述のプロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2受容体拮抗薬がありますが、GERDにはPPIが効果的です。PPIによる治療は、約8週間薬を服用し続けてその効果をみます。
6. 生活上の注意点

GERDや逆流性食道炎は生活習慣を通して発症する可能性がありますので、いくつか生活上の注意点があります。
・食べ過ぎ・早食いをやめる
・高脂肪食を避け、チョコレートやアルコールは控えて喫煙はやめる
・香辛料、柑橘系ジュース、炭酸飲料、玉ねぎ、餅、あんこなどは控える
・肥満、特に内臓肥満の人は減量する
・庭仕事や床掃除などの「前かがみ姿勢」や、腹部を締めつける服装は控える
・食事のバランスを考え、緑黄色野菜を多めに摂り、必要に応じてマルチビタミンのサプリメントなどを取り入れる
7. がんへの影響
GERDや逆流性食道炎は、放置すると「バレット食道がん」や「食道腺がん」になる可能性があります。胃と食道では厳密にいうと細胞の形が違います。GERDや逆流性食道炎が長く続くと食道の細胞が胃の細胞のように変化する状態(バレット粘膜といいます)となり、そこにがんが発生する可能性が生じます。ただし、その可能性はいまのところあまり高くないので、それほど心配する必要はありません。
【IKUKO’s POINT】
同じ上部消化管の疾患として、「胃がん」と「食道がん」について触れておきましょう。胃がんは先述したピロリ菌の除去により減少傾向が続いています。ただまだ年間約13万人もの方が胃がんと診断されていることを忘れてはいけません。(出典:全国がん登録罹患データ2016-2018)
食道がんについては自覚症状の少ないがんですから、これも毎年1回内視鏡検査が必要です。毎年1回の内視鏡検査で「胃がん・食道がんの兆候なし!」の安心感を得てください。
【会員様へのメッセージ】
当クリニックでは、検査・読影とも熟練した内視鏡専門医が担当しております。また当クリニックの内視鏡検査は鎮静剤を使用しておりますので、眠っている間に検査が終了し大変好評です。胸やけや呑酸、げっぷを放置せず、毎年1回内視鏡検査を受けて、どうぞ安心してお過ごしください。
加えて当クリニックでは、各臓器から出る疾患特異的因子(マイクロRNAなど)を検出し、悪性疾患を早期に発見できる「ミアテスト」「マイクロアレイ」などの遺伝子検査も実施しています。食道の不快感や胃痛などのお悩みも、当クリニックのナースコンシェルジュに何なりとご相談ください。



